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電子機器に囲まれてると不安になってくる。
電子機器は便利だ。無駄を削ぎ落として目的だけに特化したフォルムはプリミティブなセクシーささえある。もはやこれ無くしては生活できない。
でもどうしても不安になってくる。
今僕の目の前にはキーボード付きのiPad、隣にiPhone8、そして向こうにMacBook Airがそびえている。Macの中にはユーチューバーがいて、遊戯王の絶版パックを開封している。
そしてその右手前に、淹れたてのインスタントコーヒーがある。
もし軽く手が滑ってこのコーヒーが溢れたのなら、先述した電子機器たちは全滅だ。MacBookはどんなに良くてもキーボードの破損は避けられないだろう。半身不随だ。iPhoneの青空文庫で読みかけの羅城門は倒壊し、iPadで打っているこの文章はバックアップを取ってないので忘却の彼方だ。人類の英知は、思ったより簡単に仮死状態になる。
だけどもう既に、このように頼りないものに頼らないとワレワレは生活できなくなっている。
まるで綱渡りだと思う。
そんなことを意識して以来、どうも電子機器に囲まれすぎている生活が不安でしかたがない。
とは言いつつも僕はたった今YouTubeを閉じてNetflixを起動した。彼は僕が今まで観てきたウン10個のドラマから、僕の好みを完全に把握しているが、きっと水がかかったら死ぬんだろう。綱渡りは続く。